「さっきも言ったけど、今はなにか城内が不安定だわ…伝えるのは早めにね」
アイリーン様の胸にうずまりながらも、頷く。
ぱっと私の肩をつかんだのを合図に、ゆっくりと私たちは離れる。
「もう大丈夫ね…ずいぶん泣いたのね。素敵な目が真っ赤に腫れているわ」
「も、申し訳ありません…」
アイリーン様は私の髪を梳くようになでてくれた。
そしてまぶしい笑顔で笑いかけてくださった。
私はまだ浮かんでくる涙に笑い返すことは出来なかったけれど。
私の涙が収まってから、アイリーン様の部屋を後にすることにした。
たくさんの迷惑をかけたのにも関わらず、そんなことはないと言い張ってくれる。
しかし、別れ際の一瞬そのお顔が曇るのを、私は見てしまった。
「…信じようにも違和感しか感じられない私のほうこそ、伝えに行かなきゃいけないのにね…」
「?」
声を上げる間もなく、扉は閉まる。
それと同時に、何かの時計の針が大きく歩みを進めた気がした──。



