たった１つのラブレター

俺は、今まで恋愛なんてしたことなかった。
まず、人を好きになるって
何?　どんな感じ?

分からない。

初めて、告白されたのは、
5年前…。
ちょうど、小学校の5年生の時だった。
神埼だった。

神埼とは、小さい頃からの付き合いで
別に、いままで恋愛的な面でみたことなど
なかった。

普通の友達。
まぁ、それよりもちょっと上ぐらいかな。

神埼は、男子からも女子からも
すごい人気があって
いつも、クラスの中心的存在にいるやつだった。

おまけに負けず嫌いで、強がり。
テストやマラソン大会とか、順位がつくやつは
全部1位じゃないと気がすまないやつだ。

ドッヂボール大会で、男子におもいっきり顔面にボールを
当てられて、あごの骨にひびが入った時も
男子に体の事で、馬鹿にされた時も
あいつは泣かなかったんだ。
笑ってたんだ。
本当は苦しいくせに
ずっと、笑顔だったんだ。
だから、あいつは人気があったんだろうな…。

俺はそんな、神埼に告られた…。

普通の男子ならｏｋは、出しただろう。
でも…。
俺は違う。

神埼は、ただの友達。
幼馴染みたいな存在。

それ以上でもそれ以下でもない。

そこから、-好き-なんて感情は
決してうまれなかった。

でも、あいつが初めて泣いたんだ。
俺の前で。
俺が、何言おうとしたか分かってたみたいでさ。

泣かれちゃったんだ。
俺は、何も言う事ができなかった。

あの、強がりの
神埼が泣いた…。
骨、おっても泣かなかったあいつが…。

初めて、
俺の前で泣いたんだ…。

「ごめん」
って言えなかった。
あの時、そんな事言ってたら
きっと、神埼は…。

だから、俺は神埼を抱きしめた。
何で、そんな事したかなんて自分でもわからなかった。
好きとか、そんなんじゃないんだ。

ただ、そうするしかなかったんだ。

「泣くな…」
って言うしかなかったんだ。