たった1つのラブレター


勝負開始 5分前-

佐倉さんが、いない…?

勝負開始、5分前には
スタート地点集合のはず…。
なのに、まだきていない。

「神埼!」

神埼は、勝負に自信満々の顔をこっちにむけた。

「佐倉さんは?」

「さぁ、知らないわ。」

「嘘つくんじゃねぇよ!」
俺は、神埼の胸倉をつかんだ。


「ごめんなさい…。」

後ろから、佐倉さんの声が聞こえた。
後ろを、向くとそこには俺の体操着姿で
びしょぬれになった、佐倉さんの姿があった。

「お前…。
それ、どうしたの…?」

佐倉さんは、下を向いた。

また、神埼か…。

「ごめんなさい。
松田君。
体操着、今日部活で使うやつだよね?
勝手に、こんなにぬらしちゃってすみません…。」

よくみると、佐倉さんは
靴も履いていなかった。

「いや、大丈夫。」
そういって、俺は佐倉さんの耳元でささやいた。

(終わったら、保健室来て)

「神埼、靴ぐらい出せ。」

すると、案外すんなりと
靴を出した。
しかし、靴もびしょびしょ。

マジかよ…。
さすがに、俺の靴じゃサイズは合わねえよな。

「松田君…。」
凛とした、表情で話す佐倉さん。
すると、靴下をぬぎはじめた。

まさか、とは思ったがそうだった。
佐倉さんは、裸足でグランドを走るつもりだ。

グランドは、昨日雨が降ったから
ぐちゃぐちゃで、裸足で走ったりなんかしたら、
滑ってもおかしくない。

かなり、危険だ。