白猫チロと私の願い。【短編】

「お嬢さんはチロネコちゃんが本当に好きなのねぇ～」

私は、おばあさんの声でハッと我にかえった。

「ごっ…ごめんなさい。チロと会った時のこと思い出してボーッとしちゃいました。」

「フフ。とても幸せそうな顔してたからねぇ。」

「………ただ。」

おばあさんの穏やかで優しい顔を見ると私はあまり話すことではないような気もしていたが、逆に聞いてもらいたい気持ちもあった。


「ただ？何だい？」

おばあさんは、私に優しく問いかけてくれた。

「最近チロ、元気なくて…もう15年も生きてるし…あんまり考えたくないんだけど…でも…」

私は結論を言葉に出すのを躊躇した。

おばあさんは、そんな様子に気付いたのか、

「そぉかぃ…それは心配だねぇ。」

と、私の頭をポンポンとなでてくれた。

「実は急いでたのも、今朝慌てて家を出てきたから、チロの好きなこのハンカチ持ってきちゃってて、早く帰ってお気に入りの場所に置いてあげようかなって思ってたんです。」

「あぁ…これかい？」

おばあさんは自分の手に握り締めていたハンカチを見て言った。

「チロちゃん、元気になるといいのにねぇ…」

私もおばあさんの手に握られたハンカチを見つめ、声に力を込めて、

「はい。チロとは、ずーっと一緒だったからチロのいない生活なんて考えられません。チロには長生きしてほしい。私が死ぬまで…化け猫になってでもいいから一緒にいてほしいな。」

すると、おばあさんは、

「化け猫？」

と言って目を丸くした。

それから優しく笑うと、また私の頭をポンポンとなでながら、

「化け猫でもいいのかい？そうだねぇ。ずーっと一緒にいられるといいよね。」

と言い、一呼吸おいてゆっくり話し出した。