私はゆるく頭を振ると、財布を掴んで立ち上がった。 そういえば……冷蔵庫の中が空っぽだったはず。 ……財布の中には、別れる時に母さんから渡された大金がある。 静かに靴を履きながら、 「………ねぇ、母さん」 私はふと無意識に、 「母さんは私のこと、好きでしたか?」 別の場所にいる母さんに向かって語りかけていた。 ―――…答えは、なかった。 …………………… ……………… …………