藤ヶ谷社長は私たちの食事代まで、奢ってくれた。




私と郁弥は丁重なお礼を言って、藤ヶ谷ファミリーと別れ、別方向へと歩いて行った。



私たちはタクシーで、プリンセスホテルへと向かう。

郁弥は私に内緒で、スイートをリザーブ。



「…珠希…俺と留奈さんとは何もないって言ったよな…」



隣に座る郁弥が私に話しかける。



「うん…」



「留奈さんを見るお前の目が嫉妬していたぞー」



「え、あ…」



留奈さんの美しさが羨ましくて、思わず私は見惚れてしまった。

その視線が郁弥に思わぬ誤解を招いていた。