雫-シズク-

下を向いていた僕の顔が、少しずつそれを見上げ始める。


「……いやだ、見たくない」


見えない力で無理やり上げられる顔。


じんわり体中から冷たい汗を出しながらあごを引こうとしたけど、僕はその物体から目をはなせなかった。


そして薄ぼんやりした部屋の中で、しっかりと目が合ってしまう。


「お……、おとう、さん」


かっと開いた目で天井からだらりと見下ろす父親を見て、僕の顔はひきつった。


あの時の、あのままの姿。


だらしなくたれた口が笑ったように動く。


「俺はお前を、捨てた……」