雫-シズク-

泣き出しそうになった僕はだれかに助けてもらいたかったけど、まわりのみんなはくすくす笑って知らんぷりしている。


自分で片付けるしかなくて二つに割れたところからどろりとなにかを出しているゴキブリに近付くと、ちぎれかけた足がまだぴくぴく動いているのに気付いた。


「ううっ……、気持ち悪い……」


今すぐ逃げたかったけど一生懸命トイレの紙でゴキブリを捨てて、手洗い場でばしゃばしゃ顔を洗ってとぼとぼ部屋に戻った。




夕ご飯の時間になっても、まだほっぺたと手がぬるぬるしている気がして全然お腹が空いてこない。


でも桜井さんが残さないようにって言っていたから、僕は無理やり食べ物を口の中に入れた。


そのせいかわからないけど、部屋に戻ってから気持ち悪くなってしまう。


今日来たばっかりなのにどこか汚して嫌な子供だって思われたくなくて、冷たい汗をかきながらなんとか我慢した。


そして自分の部屋で自習する7時になっても全然よくならない胸のむかむかに、机で勉強するふりをして治れ治れってずっとつぶやいていた。