雫-シズク-

でも葵さんが俺に気付かせてくれたまだ一度も口に出していないこの新しい気持ちをきちんと言葉にしたくて、詰まりながらも止まらなくなってしまった。


するとずっとくすぶっていた心の中のもやもやが、改めて浮き彫りになってくる。


憎むことも頼ることもできなくなった俺は、これから一体なにに向かって生きればいい?


なんでもいいから、なにかを見付けたい。


二人の間にじんわり流れた静かな空気の中、ぴきんと鳴って溶けていったコップの氷をそっと見つめた。


「……圭介くん、頑張ったね」


俺の話のせいですっかり泣いてしまったおばさんが、そう言ってティッシュで涙を拭いたあとこっちを向いてにこりと笑う。


なんだかぎこちないけど優しくて、少しだけほっとした。


「浅野さんご夫婦のことを話して、圭介くんが余計辛くなっちゃうんじゃないかって思ったけど、今の圭介くんならきっと大丈夫よね。私も詳しくはわからないんだけれど、知ってることを全部話すね」