雫-シズク-

「……もう高校生だものね」


俺の正面の床に座ったおばさんが少し悲しそうに呟いた。


「俺の年、覚えててくれたんですか?」


驚く俺に当たり前よと言って笑ったおばさんの目は、ずっと赤いままだ。


あの日あの二人の自殺現場を見てしまった俺達。


今ここでどんなに懐かしいことを思い返しても、最後に辿り着くのはあのおぞましい現実なんだ。


きっと楽しかった思い出話をすればするほど余計そのあとが辛くなる。


それにおばさんにとって俺は嫌な記憶を呼び起こす真っ黒いスイッチだろう。


多分これからもあの忌まわしい出来事から逃れられない俺達には、もう笑って話せる昔話なんかないのかもしれない……。


やっぱりここには長くいちゃいけないと感じた俺は、早速抱えて来た疑問をおばさんにぶつることにした。