雫-シズク-

あまり新しい建物もなくて代わりばえのしない印象を受けながら、また家の塀や植木の高さに違和感を感じる。


なんだか気持ちが全然落ち着かなくて引き返したくなってきた。


でも俺はジーパンの中の拳にぎゅっと力を入れてずきずきと疼く胸の痛みを堪えると、なるべく深く考えないように肩をすくめて進んでいった。


「……あ」


とうとう視線の先に、それは見えてきた。


低いグレーのブロック塀にぐるっと囲まれた少しくすんだベージュ色の壁と、濃い赤色の屋根。


遠目から見ても塀を越えて高く伸びる雑草や閉めきられた暗い雰囲気に、人の気配は感じられない。


ずっと忘れようとしても忘れられなくて、何度も心の中で思い描いては真っ黒く塗り潰して、恋しくて憎らしくてぶち壊したくて。


あったかくて血生臭い俺の……。


イ、エ……。