雫-シズク-

泣きながらすがり付いてきた親父の固く冷たい手の感触がはっきりと蘇る。


そしてお袋がしがみ付いた足にまで、つきんと痛みに似た感覚が走った。


……本当に長い夢、だったのか?


戸惑いながら手を握りしめて、思い浮かべた葵さんの言葉を小声で口ずさむ。


「……しっかり、生きろよ」


これだけはとても幻聴なんかじゃなかったと言い切れるほど、しっかりと耳にこびりついていた。


「葵さん、まだいる?」


そう言ってしばらく耳を澄ませてみたけど、聞こえてくるのは病室の外を行き来するまばらな人の気配と、窓の外の車の音くらいだ。


「もしまだいるなら聞いてよ。俺、大事な話するからさ」


変わらずかすれる声でいるかどうかもわからない葵さんに話しかける。