雫-シズク-

すぐに別の施設に送られてもおかしくなんかない。


それなのにまだ俺をかばおうとする桜井さんをどうしてもすんなり受け入れることができなかった。


そんな俺の疑問に微かに目を伏せた桜井さんが、笑顔のまま少し複雑そうな表情を浮かべたのをベットの上から感じ取る。


「……私達は行き場のない子供達のために、一番に学園を守らなきゃいけないの。清愛学園っていうみんなの受け皿自体がなくならないよう、特に問題を起こす子供やその家庭には距離を置いてきたわ」


視線を床に落とし眉をひそめて苦しそうに話す桜井さんを俺は無言でじっと見上げた。


「でもその度、本当はやる瀬なくて仕方なかった。学園を守るっていう大人の理屈で子供達から目を背けてる現実が。
そんなもやもやした気持ちを葵くんが命をかけて吹き飛ばしてくれたわ。このままじゃ駄目なんだって、やっと気付かされた。……遅すぎてしまったけど」


噛みしめるように語っていた桜井さんが、そこで言葉を止めて少しの間俺を見つめた。