雫－シズク－

そう言って点滴のために布団から出していた左手をぎゅっと強く握りしめる。


すると険しい顔だった桜井さんがへなへなと脱力するように腰を落として、俺の手を握ったままぼろぼろと涙を流し始めた。


「……死ななくて本当によかった。……もうこんなこと、しないよね？」


あまりに辛そうな視線を真っ直ぐに向けられて、思わず反射的に小さく頷いてしまう。


でも実際は胃洗浄にかなり懲りていたから、桜井さんに言われなくても俺は二度とこんな真似はしないだろう。


……それに、みんなが口を揃えて俺に生きろって言うんだから。


「園長にはもう一度学園に残れるように私から話しておくから。心配しないで戻ってらっしゃい」


安心したのか桜井さんの表情が少し緩んだけど、その潤んだ瞳の奥には強い意志を含んでいるのがわかった。


こんな騒ぎを起こしてただでは済まないことくらいわかっている俺は、いくら桜井さんが園長に頼んでも無駄なんじゃないかと気持ちが沈む。