「もう部屋に戻ってもいいですか」


一瞬目を見開いた桜井さんが諦めたようにゆっくりとため息をつくと、悲しそうに小さく頷く。


「……いいわ」


その桜井さんのたった一言の返事すら待たずに、俺は指導員室のドアを乱暴に開けた。


そしてまだあちこちで騒ぎながら掃除をしている子供達の中を通り抜けて、足早に階段を上がり部屋へと戻っていく。


「くそっ」


勢いよくどかりと椅子に座って机に突っ伏すと、やり場のない苛立ちで思わずぐっと拳を握りしめた。


注意されるくらいでまさか違う施設に送られるとは考えていなかった。


「くそっ、俺がなにしたってんだよ!?ここには迷惑かけないでやってんだろ!?親がいないと問題起こしそうってだけで追ん出されんのかよ!」


俺のことなんかなにも知らないくせにと悔しさが込み上げて、学園に来て以来ずっとくすぶっていた劣等感がうねりをあげて心を支配し始める。