雫-シズク-

「桜井くん、佐伯のことは一年以上前の話だ。もう十分時間は過ぎたはずだろう。それに……」


じろりと酷くさげすんだ視線で、高木さんが俺の左腕の包帯を冷たく見つめる。


「いくら怪我をしたからといってこれみよがしにそんな物をいつまでも巻き付けて、傷の他になにか隠したい物でもあるんじゃないだろうな?手に負えない園児は本来なら一旦保護者の元に返す所だが、それができないならよそに移すしかないだろう」


「あの、包帯は傷跡を気にして隠しているんじゃないでしょうか?ね、圭介くんそうでしょ?」


他人事のようにただぼうっと椅子に座って二人の会話を聞いていた俺に、懸命に食い下がる桜井さんとこれ以上話をしたくなさそうな高木さんの視線が集まる。


ようは俺はこの学園のお荷物で危険分子で厄介者ってことか。


そう考えて胸に込み上げてくる感情を抑え切れなくなった俺は、突然噴き出すように笑い出してしまった。


「……ふっ、ふふふっ、ふははははっ!」