どんなに優しくたって、死んだらなんにもならないじゃないか。


その優しさを少しでも自分自身に向けてくれたなら。


その覚悟を生きるためのものに変えてくれたなら……。


そこで俺は目をつぶったままきつく唇を噛み締めた。


俺は葵さんの死を止められる存在にはなれなかった。


絆や信頼、全てが俺には足りなかったんだ。


だから今この現実がある。


俺という存在は、一体なんなんだろう……?


葵さんを思い止まらせることもできなかった俺に、一体どんな価値があるというんだろう。


そして俺の胸に広がる葵さんを失ったやり場のない感情が、真っ黒い炎のようにゆらりゆらりと燃えさかり始めた。