雫-シズク-

そして桜井さんは俺にそのまま指導員室で休むよう指示すると、学園の隣にある園長の自宅へと向かっていった。


ぽつんとソファーに残った俺は、縫い目のほころびた背もたれに深く体を埋めてぎゅっと目を閉じる。


……きっと、葵さんは大丈夫。本当は強い人なんだから。あの時は死に切れなかったなって笑い合う日が、きっと来る。


俺は今朝ベットに座っていた葵さんの笑顔を思い出した。


死を隠した優しい笑顔の裏側で、葵さんはどんな顔をしていたの……?


そんな記憶の中の葵さんの額に、なにかがじゅわじゅわと浮かび上がってくる。


最初はぼんやりとした朱色のそれが、だんだんと濃くなってまるで葵さんの頭上からどす黒い血糊が垂らされているように、とろとろと流れ落ち始めた。


その途端、おびただしい血の海の中に横たわる葵さんの映像がフラッシュバックして、俺はその場で硬直してしまった。