雫-シズク-

でもそんな計ったように俺の血管を避けた細く赤い線からも葵さんの優しさを感じてしまった俺は、ぎりぎりと歯を食いしばった。


どうせなら血管まで切り付けて同じ痛みを与えてくれればよかったのに。


そうしてもらえなかったことが酷く悔しくて虚しい。


「あ、しみた?ごめんね」


俺の表情が薬のせいだと思った桜井さんの手つきが丁寧になる。


「……いえ」


そして俺はじくじくと刺激を受ける自分の生々しい傷口を冷ややかな視線で見下ろしながら、心では葵さんのことを考えていた。


もし自分のために生きられなくても、どうか俺のために生きてよ。


ただただ命を取り留めて欲しいということだけを、長い年月をかけて育ててきたはずの絆と一緒に遠く離れた葵さんに願い続けた。