「浅野は来なくていい!戻れ!」


その言葉が胸に突き刺さる。


葵さんの命がかかっているのに離れるなんて納得できなかったけど、もし病院に付き添ったとしても俺にできることは多分ほとんどない。


「……くそっ」


赤黒く染まる両手を強く握り合わせて、そのまま顔を隠すように覆った。


悔しさがあとからあとから押し寄せてきて潰れてしまいそうだ。


「……圭介くん」


不意に名前を呼ばれて顔を上げると、食堂の入口に桜井さんが立っていた。


「今葵くんのお母さんに連絡を取ってるわ。辛いと思うけど……、なにがあったかこっちで話を聞かせてくれる?」


頷く代わりに視線を少し落とした俺は、力の入らない体を無理矢理起こして桜井さんの方へゆっくりと歩き出した。