「お父さんいたんだ。ねぇ、喉渇いちゃったよ。お母さんは?」


不思議そうに父を見上げて近寄った足に触れると、体がぐらりと少しだけ揺れる。


その瞬間首からのびるロープが重みに耐え切れなくなり、ぶつりっと鈍い音を立てて冷たく硬い塊が少年の上に落ちてきた。


「痛っ、痛いよ!お父さん!」


衝撃でランドセルを飛ばされた少年は下敷きになった足を力一杯引き抜くと、目を見開き仰向けで横たわる父に問いかけた。


「ねぇお父さん、どうしたの?具合悪いの?」


いくら揺さぶっても反応のない父にだんだん不安を感じてくる。


「お父さん!お父さん!」


不安が恐怖に変わり震え始めた少年は、不意に手を止め少しの間呆然と苦悶の表情を浮かべる父を見つめた。


そしてそんな無言の父を諦め、母に助けてもらおうと泣きながら家中を探し回り始めた。