雫-シズク-

学園に着いて芯から冷え切った体で玄関を開けると、廊下を背にどかっと座り込んで靴紐をほどき始める。


「今日学校から帰ったらちゃんと話そう。きっと葵さんだってこれから大変なんだ」


冷え切った手が思うように動かないのも気にならないくらい、俺は葵さんのことばかり考えながら部屋に戻った。


「うわっ!?」


いつも通り葵さんを起こさないよう静かにドアを開けた俺は、薄暗い室内にぼうっと浮かぶ人影を見付けた。


「あっ、葵さん!?」


俺に背中を向けて机の前に立っているのは間違いなく葵さんだ。


こんなに早く起きている姿を一度も見たことがなかった俺は、全然予想していなくて幽霊じゃないかと酷く驚いてしまった。