雫-シズク-

「なぁ、俺の一体なにがわかんの?なに知ってるっつーんだよ!あんたらには迷惑なことでも俺には必要なんだよ!」


その言葉と同時に指導員室のドアが勢いよく開いた。


「亮くん!待ちなさい!」


引き止める桜井さんを無視して、亮くんはみんなが集まる食堂の方に目を向ける。


人の間から、一瞬顔が見えた。


睨み付ける鋭い目の下には青紫色のあざ、そして口の横は切れて赤黒くなっている。


亮くんはみんなの視線を弾くように振り返り、玄関へと走り出した。


「逃走か、アホだな」


俺の隣で葵さんがぼそりと言う。


「なんでアホなの?」


あ?と言ったあと肩をすぼめながら葵さんが答えた。