相変わらず酒癖の悪い父親と優しく守ってくれる母親
に育てられ毎晩怯える子供たちも成長と共に身を守る
事を自然と覚えていく。
ある夜の事、遅くに電話がかかってきた。九州のとあ
る地方の田舎に住む父親の母が亡くなったと知らせて
きた。急遽、明日に家族で帰る事になった私たちだが
夜中まで荷造りをしていた。ただ大変な時期でもあり
明日は亜子の小学校卒業式と昌弘の高校受験日も重な
っていた。そして日が昇ると同時に慌ただしい一日が
始まった「亜子の卒業式が終わったらすぐ帰郷する」
と母から伝えられたが、兄の昌弘だけは受験の為に
残る事となった。父と母そして亜子と弟の修浩の四人
で帰ると決まった。
生まれて初めて見るお婆ちゃんの顔に亜子は泣く事は
なかったが凄く不思議な感じがした。目の前には死ん
でいる婆ちゃんの姿があるのに怖いとさえ思わない。
寧ろ、会えて嬉しかったのである。何か聞こえる…
誰?「ありがとう会えて良かった」亜子の耳には
確かに聞こえた。その時からだろうか?亜子には何か
不思議なカがあると分かったのは…後にいろんな体験
をするなんて亜子自身そのカに気付いていなかった。
要約お葬式も終わり10日程親戚の世話になっていた。
私達は一人待つ昌弘を心配して我が家に戻って来た。
無事に高校を合格した昌弘のホッとしていた姿を見て
「良く頑張ったな~昌弘」と、母は声をかけたが照れ
ているのだろう「うん」と一言呟くだけだった。