俺は鍵盤に向き直し楽譜を見ながらゆっくりと弾き始めた


久々の感触に少し戸惑う


それでも何とか最後まで弾き終えた


「どう?

……泣いてる?」


振り返ると鈴谷の頬に一筋、涙が流れていた


その顔を見て後悔した


やっぱり鈴谷に頼むのは間違っていた


ピアノを嫌がっていたのを知っていたはずなのに


「ごめんっ、やっぱり嫌、だったよな…」


だからもういい


そう言おうとしたのに…


「ううん、そんな事ない。

練習しよう」


鈴谷は涙をグイッと拭ってそう言った