社長の溺愛・番外編




時間にしたらそれほど経っていないだろうが、俺にとって沈黙は辛すぎて少し緊張する



と、腕のなかで黙っていた翼が身動ぎをした



「………翼?」

「………寝る」


するりと腕のなかから抜け出したと思ったら仔猫さながらの早さでドアまで行く



「おやすみ…なさい、お仕事頑張って…」

「……翼、ひとりで大丈夫なのか?」



自分で言ったくせにこうも素直に納得されると不安になる



「…………おやすみ」



なのに下を向いたままそう告げた翼はくるりと身を翻して寝室のほうに行ってしまった



「ああ、もう…」



こんなふうになるくらいなら休みなんかいらないよ……



俺はひとりで無理をしているであろう彼女の後を追いかけた………