「行こっか、性悪秘書に文句言われる前にね」

「しょう…?」

「気にしないでいいよ」

「そうなの?じゃあいいや」


ぴょんぴょんとうさぎのように小鳥のように跳ねる彼女に以前の面影はない


それもこれも全て慎さんのおかげなんだろう

もしも俺が、あのときに翼に声をかけて慎さんよりも先に行動をおこしたところで

きっと彼女は幸せになれなかったと思う


ちょっと悔しいけど、翼には慎さんじゃないと駄目なんだ


階段をかけ降りて下から可愛い声で俺の名を呼ぶ彼女


「なっちゃーん、は・や・く」

「行くよ、走らないでね」

「はーい」


足早に翼の元に駆ければ既に帰る準備万端


苦笑しつつも可愛いので許しちゃうね


「何のお話するのかなー」

「さぁ、慎さん急だからね」

「ねー」



首を傾げて同意する素振りを見せる


「よし、行こっか」

「行くー」



初恋は大事だけども、大切な思い出としてしまえればいい


だから、今はこれでいい

ただ近くで見守れれば


「うっわ、性悪秘書がいる」

「しょう…?あ、幸弘くん!」

「(うっわ、ニヤニヤしてるよキモッ)」


「おい南月、お前今なんか言ったろ!」


「え、すいません滑舌悪くて聞こえません」


「おいおいおい…クソガキ!」


まぁ、こんな日常だって悪くない



恋、してた。