否、天使のような少女がいた
カッシャン―――…
ふらふらと頼りない歩みで隅に隠れるようにして身をフェンスに預けている
じっとその姿を見つめる
酷く疲れきった様子で目を伏せている
遠くからでもよくわかる綺麗な顔には表情なんてまるでなく人形のようにしか見えない
暖かみのあるぬるい風に茶色かかった髪が揺れている
それでも彼女は何も気にすることなどなく、ただひとりの世界にいるように見えた
どうしてこんな時間にここにいるのか
こんなに綺麗な子いままで学校にいただろうか
何年生、何組、名前は、趣味は、彼氏は、家族は、君は誰か
気になることは山ほどあったが何よりも沸き上がる感情はひとつしかなかった
ああ、好きだ
そう自覚するまでに時間はいらなかった
すぐに鐘をならして俺のなかで淡く色ずくそれは、初恋の始まりだった
初恋の―――…

