「それ、亘が?」


「うん、なんかたまたまあったからあげるって」



なにやら気になる会話をしているが黙って書類に集中する



「ねぇ…慎……?」


「………………」


「慎………?」


彼女が近づいてくるのがわかってもあえて気づかないふりをする


すると、俺の座るデスクまであと2、3メートルというところで突然止まった



「…………慎…」


「………………」


「どうして…お話…聞いてくれないの…」



ソファーに腰掛けた幸弘が深いため息を吐きながらなにか言っているが全然聞こえない



「………っく…慎……」


やばい、やばいやばい


彼女が泣いてしまった


ああ、もう!と半ばやけくそになって顔を上げた



「…つ…ばさ…?」