社長の溺愛・番外編




―――――……



数十分後、車が止まったのはずいぶん久しぶりとなった我が家だ


懐かしい雰囲気のそれに翼はきょとんとしながらもどこか不安定さを感じさせる


きっと、思い出しているのだろう事故のことを、両親のことを



車を出て助手席の方へと回れば少しばかり、泣きそうな彼女



「翼、おいで」



手を差し出すと飛び込むように抱きついてくる
いつもと同様、片腕に抱き上げると肩口に顔を埋めた



「慎……」

「ん?どうした」

「………なんでも…ない」

「そっか」



言いたいこと、思ってることが纏まらないらしい翼は髪を撫でる俺の手に安心したように息を吐いた



もしかしたら、ここに来たのは間違いだったのかもしれないと一瞬、嫌な考えが過るも無理矢理否定した


だだ、彼女が苦しまないように、泣かないようにと気を配る


ちらりと様子を伺ってみると翼は俺にしがみついているだけ、特に何かあるわけでも無さそうだ



小さな身体を抱え直し、懐かしい家の敷地へと足をのばした