「あら、京ちゃんまた来てたの?」という先生の声で目が覚めた。
ぼんやりとかすむ視界に、白いシーツが映った。
そういえばここは保健室で、そういえばおれはまた熱を出して寝てたんだっけ、と寝起きの頭で思い出す。
「あーはいヒマなんで。」
さっきの先生の問いかけに対する返答が聞こえた。
それはもう聞き慣れてしまった心地のいい声。
……キョウちゃん先輩の声だ。
と、頭が理解するのはとても速かった。
視線を持ち上げていくと、ベッド脇の椅子に見慣れたセーラー服姿を見つけた。
バチッと、目が合う。
「あ、おはよう春人。」
「……おはよう、ございます」
「おはようっつってもまあ放課後なんだけどね。」
先輩は腕と足を組んでそう言った。
放課後かあ。寝過ぎちゃったなあ。と、目を擦る。
すぐ傍の窓から、夕日が射し込んできた。雲がどいたのかもしれない。
その茜色の夕日は先輩の黒いセーラー服を照らす。一緒に黒髪も照らした。
オレンジに光る黒髪は、肩の位置を少し通り過ぎるくらいに伸びている。
先輩を初めて見てから、もう2年経つんだなあ、と、思った。
「あら、春人くん起きたの?体調はどう?」
先輩が座る向こうのカーテンが開き、よくお世話になっている保健室担当の先生が顔を出した。
おれは目を擦っていた手で布団を顔に引き寄せながら答える。


