「……はらへった。」


ぼそっと、ミャーコがつぶやいた。

同時におなかが鳴って、ミャーコは自分のおなかをさすった。

それが合図とでもいうように、ひぐらしが鳴き始める。

風はすでに、やんでいた。


「なんか食べる?」


尋ねると、ミャーコはうなずいて起き上がる。

それから大きな伸びをして、遠慮なく欠伸をしてみせた。

一度脱力してから立ち上がり、「ほらー春人起きてーごはん食べるよーキョウちゃん先輩が飢え死にするぞー。」とか言いながら、ソファに歩み寄ってハルを起こしにかかる。


風に飛ばされた、進路相談の紙。

白紙のままのそれが、まるで自分のようだと思った。

群青色の空を見上げる。

もしかしたら、これが最期の空かもしれない。


なんて、ね。


夜へと移り変わる空を見上げて、そう、笑ってやった。





ピピッと、自分の中で微かに鳴る、機械音を聞きながら。








【END】