余計な事。
うん、余計な事を考えていたかもしれない。
“人”の歩く道なんて……ミャーコの歩く道なんて、アンドロイドが考えたところで、それは余計なこと以外の何物でもなかった。
だけどそれを言ったら、きっと君は怒るだろうから。
「……さあね。ご想像にお任せします。」
「わかった。じゃあノアは今やましいことを考えていたということにしよう。」
「あんたさ、それハルにも失礼だとか思わないの。」
「ごめんそうだった春人マジごめん。」
「この扱いの差はなに。」
「その言葉、そっくりそのままお前に返す。」
「だから、何度も言ってるけど、俺がミャーコのこと大っ嫌いなのは、」
「システムのせいだもんね、わかってる。」
ミャーコは頬杖をついていた手を、軽く振って答えた。
夕暮れの風が、サァッと、リビングのフローリングを撫でる。
長く穏やかな風。
ひぐらしの声がやむ。
いつの間にか横向きに寝転んだ、ミャーコの黒髪がなびく。
彼女の手から、進路相談の紙がふんわりと浮かんで、飛んだ。
「――ノアから嫌われるのは、慣れてるから。」
囁くようにそう言って、ミャーコはふわりと笑った。


