8月が過ぎたばかりの、9月。
暑さや寒さを感じない俺にはわからないけど、“人”にとってはまだまだ暑いらしく、ミャーコの服装はまるで真夏みたいだ。
その服から伸びた手足が淡い群青色を帯びる。後ろのソファでハルが寝てるからって、ミャーコはリビングの電気を消していた。
ひぐらしが鳴いている。
「んー……どうしたらいいんだこれ。白紙で出すとスーさんがうるさいし。」
「……そういえば、あの泉って人は大学行ったの。」
「行ったよ。あでもどこ行ったか聞いてねーや。」
「フツー知ってるだろ。」
「いやだってアイツのこととか本気と書いてマジと読むレベルで興味ないですし。」
「でも4年大学っていうのはわかってるんでしょ?」
「就職した歳で考えたらたぶんそうだと思う。」
「それこそ東大だったりして。」
「どうだろう。ヤツも別に勉強が好きなわけではなかったはずだが。」
「なんだかんだ言って知ってるじゃん、泉のこと。」
「黙らっしゃい。」
仰向けで進路相談の紙を眺めていたミャーコは、そう言いながらまたうつ伏せになった。


