昇降口へ行くと、雨音が一層激しく聴こえた。
開けっ放しの昇降口から流れ込んでくる湿った風。
湿気のせいで少し濡れたような前髪をどことなく邪魔に思いつつ、靴を履き替え外へ出る。
そういえば今日は傘を持ってきていなかった、と思い出したのは、昇降口の屋根からぽつりぽつりと落ちていく雫を目の前に見てからだった。
その向こうには、しきりに落ちる雨粒。
ここで待っていたらやむだろうか。いや、今は梅雨だから、早々やんではくれないだろうな。
そんなことを考えつつ、小さくため息をついてから踵を返す。
そこで気づく。誰かいた。
「…………」
しゃがみ込んでいるからわからなかった。
隅っこの方にしゃがみこみ、うとうと舟をこいでいるのは、先に帰ったはずの千早だった。
手には鞄しか持っていないから、たぶん千早も傘を忘れて、ここでやむまで待っていようと思ったんだろう。
昨日の夜も遅くまで起きていたみたいだし、どうやら睡魔に勝てないようだ。
呆れた、というため息をつく。
歩み寄り、屈みこみ、安定しないその額に軽くデコピンしてみた。
「……む?」
デコピンの軽い衝撃で頭を後ろに倒した千早は、眉根を寄せて短く呻いた。
そのまま瞼を持ち上げる。必然的に目が合った。
何度か瞬きをして、ぱちりとしっかり目を開けた。どうにか睡魔に勝ったようだ。
「おー!カイトさんじゃないっすか!」
「……うん」
「待ってた!超待ってた!」
「…………」
「あたし今日傘忘れちゃって帰れなかったんだよカイト氏!持ってるよね傘!よろしければ一緒に傘に入れてもらえないだろうかと!」
「…………」
「……思ってたんだけども」
「…………」
「鞄しか、持って、ないっすね……」


