「――ふはっ」
わたしがじっと見上げていると、たまらず、という風に、有架は笑い出した。
笑った。笑いやがった。コイツ。
「なんで笑うっ……いったー!」
勢いをつけて立ち上がろうとした瞬間、ずーっと膝を曲げていた負担が一気にやってきた。
足を擦りながらひいひい言うわたしを見て、ヤツは更に笑う。
「バカだろ」とか言いながら笑う。
労われ。くそう。
笑うなんて。
泣きそうだ。
笑うなんて。
「――まさか、」有架は、笑いながら言う。「お前に、背中押される日が来るとは、思わなかった」
そうして、優しい目をして、わたしを見つめる。
「――久しぶり、永瑠。」
可愛くなったじゃん。
伸びた黒髪が、夏の風に舞う。
蝉の声が遠ざかる。
レンズ越しじゃない瞳に、夏の日差しが、キラキラと眩しい。
眩しい。
「――――」
わたしは思わず、泣いてしまった。


