「……お前っ」ひとしきり笑ってから、ヤツは言った。「俺の名前も知らねーくせにあんだけ、話しかけて来てたのかよっ」
「やかましいわ」
「ははっ」
あー…と、深呼吸をして、ヤツはようやく、名前を答えた。
「――有架」
アリカ。
「あー、そんな名前やったなあ」
「そーだよ。覚えとけ」
「おー。あ、せや、俺の名前はなあ、」
「袮夏だろ、知ってる」
「なんや、知ってたんやな」
「だってお前、目立つしうるせーし。」
「そうかー?」
「あぁ、あとバカだし。」
「やかましいわ!」
言い返す。
もっと言ってやろうかとも思ったけど、それはやめておいた。
とんっと、背中に重みを感じたのだ。
有架はこっち向きに座っていたから背中じゃないし、じゃあ、頭か。
項垂れてんのかなあ、というその姿が、安易に想像できた。


