不機嫌の中に少しだけ気恥かしそうな表情が混じっていたから、思わず笑う。
そしたら今度こそ不機嫌顔になって、投げやりのような勢いでヤツは荷台にまたがった。
しっかり乗ったのを確認してから、俺はチャリのペダルを蹴った。
帰り道の風景が、どんどん後ろに流れていく。
街の音が聞こえる。誰かの笑い声も聞こえる。後ろのヤツは黙っている。
そういえばコイツの名前は、なんだったっけ。
たしかちょっと、珍しい名前だった気がする。
「……なあ」呼びかける。
「……なんだよ」返答が来る。
「お前さ、名前なんやっけ?」
「…………。ふはっ」
あははっ。と、後ろから初めて聴く笑い声が響いた。
なんや、笑えるやん。
笑えるやん、お前。
笑えもしないんかと、ちょっと心配してたんやで。


