霞んだ視界に、もう見慣れてしまった天井が映る。
なんで霞んでいるんだろう、と思って目を擦ると、目を擦った手が濡れた。
あ、泣いてたんだ、私。
ぼんやりそう認めながら起き上がる。
ベッド脇のカーテンを開けてみると、空はまだ薄暗かった。
向こうの方に朝日が昇ってくるのが見える。
そろそろこの街に朝がやってくるらしい。
ベッドに座り込んだまま、私は窓の外を眺め続けた。
日本語がどこにもない街並みを、ずっと。
しばらくそうしていると、ふと、朝日の射し込んできた私の傍に、画用紙があることに気が付いた。
なんでこんなところに、と首を傾げたあとに、あぁそうか、今スランプ中で、どうしようもなくて、それで全部の画用紙バラまいて……。
昨日のことを思い出しながら、画用紙を手に取り、息を呑む。
画用紙の端に描かれた、謎の落書き。
その落書きは、もう絶対に泣かない、とあの日決めた私の決意を揺るがすのに、十分な存在だった。
いつだったか、彼はこれを捨てろと言った。それホントただの落書きだから、って。
捨てようと思った。こっちに来る前にも、こっちに来た後にも、何度も。
だけど捨てられない。
捨てられるわけがない。


