授業中、問題に答える時のような声ではなく、感情のある声を聞いたのも、これが初めてで。
私は何も言えずただ茫然と、永瑠ちゃんの言葉の続きを待った。
「……お、お邪魔しました…!」
「おじゃ…!?」
もう永瑠ちゃんは、かなり動転していたらしい。
さすがに私も、これには驚いて口を開いてしまった。
踵を返そうとした永瑠ちゃんを、私は慌てて呼び止める。
「な、永瑠ちゃん待って!」
ビクッと。小柄な姿が、小動物みたいに跳ねた。
ぎこちなくこちらを向いた永瑠ちゃんは、今度こそ冷静さを失った顔色だった。
「な、なんで…オレの名前……」
「な、なんでと言われても…私と同じクラスだし……」
「あ、そ、そうですよね……」
「う、うん……」
私もこの時、自分でもわからなかったけどかなり動揺していたみたいで、永瑠ちゃんの呼称に違和感を覚えなかったけど。
そういえば噂にもなっていた。
永瑠ちゃんは自分のことを“オレ”と呼ぶ変わった子だって。
だけど私は、そんなこと微塵も気に留めなかった。
それよりなにより、なんとか冷静さを取り戻して、この場を無駄にしない方に必死だった。
どうしてだろう、わかんなかったけど。
私は無意識の内に、この子と話がしてみたいと、思っていたのかもしれない。


