「……え、っと」
「ニーナあいつと喋ったことある?」
「い、いや、ないかなー」
「だよねー」
「ってかアイツと何喋んの?的な?」
「っつーかむしろアイツ喋れんのみたいな?」
「無口すぎて逆に怖ぇーし」
「まあ目障りだから、ニーナが睨んじゃう気持ち超わかるかも」
「わかるわかるー」
「……あはは、そう?」
私は笑う。みんなも笑う。
罪悪感がふつふつとわき上がる。でも笑わなきゃいけない。
心の中だけで、永瑠ちゃんに謝る。
私は思ってない。そんなこと思ってないから。って。許しを請うように。
そんな私の胸中に気づくトモダチなんて居ないから。
みんなはすぐにまた、昨日のテレビの話に戻る。
別に面白くもなんともないテレビの話に、私は笑わなければならないのだ。
教室の隅に座る彼女が、たまにうらやましくもなる。
あなたは私みたいに、ムリして笑わなくていいから、いいね。って。
*****
その日は放課後、私は日直の仕事でひとり、教室に残っていた。
グループのみんなが「サボっちゃえよー」って遊びに誘って来たけど、ちょうどその時、担任の先生から呼ばれたから、みんなも渋々と言ったように私から離れて行った。
みんな面倒事には関わりたくないからだ。
だけど私にとって、それはとてもありがたいことだった。
放課後まで息苦しい思いをしなければならないなんて、もう、たまったものじゃないから。
放課後になってやっと、少し息ができるようになるのが、もはや日常だった。


