爽やかな初夏の風が吹く、午前8時。
昇降口に入り、靴箱の前に立ち、自分の靴箱を覗いて中を確認する。
大丈夫、いつも通りだ。
少しの安堵と、けれど不安感は拭えないまま、靴を履き替え廊下を歩く。
ガヤガヤと騒がしい。
階段を一歩一歩、踏みしめて上る。
上って行くにつれて、足に鉛が絡んだように重たくなっていく。
大丈夫、大丈夫。
自分に言い聞かせながら階段を上り、教室に向かう。
騒がしさが増す。私の隣をクラスの男子が数名通り過ぎていく。
なるべく目を合わせないように。だけど平然に。
「おはよう」と言われれば返すし、言われなければ私も何も言わない。
今日はこちらに気づかなかったようだ。
私は教室の数メートル前で足を止め、耳を澄ます。
グループの子がもう来ているか、来ていないか。
……あぁ、来てる。
ドッ、と。知った声が聞こえた途端に、私の体はとてもじゃないけど重たくなった。
だけど行かなければ。行かなければ今日一日何があったかわからない。わからないじゃ済まない。わかってなければならない。でないと、ついていけない。
ここでいつも通りに振る舞うのと、明日トモダチが居なくなっているのと、どちらがツライかと聞かれれば、当然、後者になるのだ。
大丈夫、大丈夫よ。いつも通りにやっとけばいいんだから。
いつも通り、笑って話合わせてれば、それでトモダチやってけるんだから。
私は、ハブられずにすむんだから。
安全な場所に居られるんだから。
意を決し、教室に踏み込んだ。


