ため息と共に机に突っ伏した高橋は、「だってカレンが世界救えとか言うから……」などとほざいているが無視に限る。

お前の二次元の嫁の話など聞いていない。


「……高橋。お前よくそれで高校に入学できたな。」

「お前今ガチで言ったな!?割と本気でそのセリフ言ったな!?ごめん俺も思ってたわ!!」

「黙れ馬鹿がうつる。」

「坂本のキチク度が春の頃よりアップしている気がしてならない。」


っつーか数学教えてくれよー!と喚いている高橋のおかげで本が進まない。

高橋が黙っていれば、放課後の教室は静かでいいところだというのに。

言っておくがお前に数学を教える時間があったら広辞苑が一冊読める。

高橋の理解力の乏しさは異常だ。特に数学に関しては。

中学の頃のコイツの数学武勇伝をひとつ暴露するとすれば、テストの解答用紙の欄をすべて埋めているというのに0点を取った事だろうか。

その時に高橋から泣きつかれて不承不承と数学を教えた時に、あぁコイツダメだわと思って以来、ヤツに数学を教えることは諦めている。

そんなわけで、いくら頼まれても高橋の「数学教えてくれ」という頼み事は聞いてなどやらない。

しかしコイツうるさいなと思っていると、


「あはは、今日もにぎやかだねー!」


という明るい声と共に、窓から見慣れてしまった姿が登場した。

童顔をふわりとした髪の毛が覆っているその顔は、紛れもなく渡辺先輩だった。

そしていつぞやかと同様、先輩の登場に驚きすぎた高橋が椅子から転げ落ちる。

派手な音を立てて床に転がった高橋を、俺は呆れ顔を隠しもしないまま見下ろす。

渡辺先輩は大爆笑だが。