脇役というのは、至極面倒な立ち位置だと思う。


「さぁあかぁあもぉおとぉおッ!!」


現在、机をバンバン叩きながら俺の苗字を叫んでいるのは、対する主人公・高橋翔平である。

ちなみに俺は苗字だけで、下の名前は本編にすら出ていない。

なのでここでも“坂本”一択である。


「ホントマジで数学だけでもいいから!頼む!」

「だが断る。」

「なんでだよ!」

「俺がそれを引き受けたところで、こちらにはなんのメリットもないからな。」

「なにそれひどい」

「わかったなら他を当たれ。」


それだけ言い放って、俺は開いていた文庫本へと視線を落とす。

頼むとか引き受けるとか、一体何の話かと説明すれば、単に高橋の勉強の話だ。

ヤツは今回のテストで4つ欠点を取った。

3つはなんとか勉強できるらしいが、数学がさっぱりなのだと言う。

だから俺に教えてくれと頼み込んできているのだが、こちとらコイツのように暇ではない。

そもそもを言えば、だ。


「俺はテスト期間を有効に使えと忠告したはずだが。」

「うっ……」

「だというのにその期間、勉強もそこそこにゲームをしていたのはどこの誰だ?」

「はい俺です……」

「ざまあとしか言いようがないな。」

「ごもっともです。」