「あたしにだけすげぇ嫌味言うし愛想悪いし腹立ってしょうがなかったヤツが居たんです。」
「…………」
「出会い方はそりゃもう黒歴史レベルで最悪でしたし、いろいろ面倒なヤツだったし、問題大有りな後輩でした。」
朝倉さんは至ってポーカーフェイスだ。
愚痴みたいに聞こえるけど、それが全部過去形だということに、わたしは今ここで気が付いた。
「でも」朝倉さんは続ける。「本当はいいヤツでした。」
そこで朝倉さんは、わたしを見た。
「北沢さん、信じてもらえますか。」
「……え?」
「そいつ、システムのせいで、あたしのこと大っ嫌いだったんです。」
「……システム?」
「アンドロイドだったんです、彼は。」
……アンドロイド?
「人間じゃなかった。システムがちょっとおかしかったせいで、嫌なヤツになってたんです。」
「…………」
「それでも、ヤツはシステムに反して、あたしのこと助けてくれたり、不器用だけど優しい行動してくれたり、笑ってくれるようになったんです。」
「…………」
「で、本当に自分でも気づかなかったんですけど、」
朝倉さんは、そこで初めて、少しだけ笑った。
「――好きになってたんです、あたしは。ヤツのことを。」


