くわっと怒り始める千早に、ちょっと笑う。
その頭に手を置いて、撫でる。
千早は「むう」とふくれっつらで、けれどおとなしくなる。
なんていうか、そういうのが、ズルイって。
「……冗談だよ」
そう言うと、千早は「バカイト」と文句を言う。
結局晩御飯の話はそれきりになってしまって、千早はふくれっつらのまま、顔を背けてしまった。
けれどしばらくすると、機嫌が直ったのかなんなのか、またさっきと同じ鼻歌を歌い始める。
それがなんとなく面白くて、千早にバレないように、笑った。
まあ、いいよ、なんでも。
こういうどうでもいいような会話して、雨が止むのをただ待って。
あと何度、こうして同じ時間を過ごせるのかわからないけれど。
できればこの雨が、もう少し止まないでほしいかな、なんて思いながら。
彼女の歌う微かな鼻歌に瞼を閉じた。
――あぁ、思い出した、この歌。
君が一番、好きな歌だ。
【END】


