「大丈夫。春人のクラスメイトはみんな優しいから。」
「…………」
「楽しい1日が、過ごせるようになると思うよ。」
あたしが保障する。
先輩はそう付け加えて、笑った。
その笑顔は、入学式の日に見た、あの笑顔と同じだった。
あぁ、先輩だなあと、思って。
おれはたまらず、泣いてしまった。
「……キョウちゃん先輩っ」嗚咽を飲み込んで、言った。「ありがとうございました…っ」
頭を下げる。布団に顔を押し付けるようにして、お辞儀をした。
先輩はちょっと困った顔をしていた。でも笑っていた。
「あはは、大袈裟。」
泣くな、と、先輩の華奢な手がおれの頭を撫でた。
「……こちらこそ、ありがとうございました。」
「……高校でも、がんばってください…っ」
「うん。」
ありがとう、と、先輩は言う。
おれは顔を上げられなかった。
放課後の風が舞い込む。
夕焼けはがまぶしい。
保健室の傍にある、桜の開花は、きっともうすぐ。
それが少し恨めしい、3月の日。
【end.】


