それはもうすべて、本当に“思い出”になってしまう。
先輩が傍に居ることは、おれにとってもう、当たり前の日常になっていたのに。
なのに、もうすぐ。
「……居なくなっちゃうんですよね…キョウちゃん先輩……」
思わず、気持ちが言葉になった。
先輩はじっとおれを見ていた。
それから窓を離れ、ベッドにゆっくりと腰掛けた。視線は、カーテンのほう。
「……うん。」先輩はうなずいた。「居なくなるよ。」
励まさないし、否定もしない。
先輩らしいなあと、とても思った。
「……そんなの、さみしいです」
「何言ってんの、一生会えなくなるわけでもないのに。」
「おんなじようなものです」
おれにとっては。
「知ってますか。ずっと保健室に居ると、1日がすごく長く感じるんです」
「…………。」
「楽しいことは何もないし、面白いことを見つけることもできないじゃないですか。体調が良ければ勉強して、たまに本を読んで、先生がいれば少し話をして、それくらいなんです」
「…………。」
「だから長いんです、すごく。1日が。そんな1日がまた1年間、始まるのかと思ったら、おれすごく、さみしいです」
先輩はずっと、黙って聞いてくれていた。


