【短編】それって好きってこと。



「おーい、ヤス…」


「な、泣いてねぇっつの!!」


ガタンと椅子を後ろに蹴倒しながら叫んだ俺は、目の前でポカンとしているクラスメイトの
存在に気づいて、ハッと我に返る。

う、うわあああ…!
やべぇ、やっちまった…!


「わ、わりぃ」


「お、おう。お前頭大丈夫?イカれてんじゃね?最近ラリってるやつ多いもんな」


「…ねぇそこで毒吐く必要あったかな。なかったよね、うんなかったぞ!」


爽やかに吐かれる毒ほど、精神的にくる。
てか、俺謝ったじゃん!
何でこんな泣かされそうになってんのかな!


「……で、なに?」


悪い悪いと全く悪びれた様子もなくヘラヘラと
笑っているクラスメイトに、ため息混じりに問いかける。
すると親指をクイッと入り口の方に向け、俺にそちらを見るように促す。


「あいつらが来てるぞ。ヤス呼んでこいって言われたんだよな」


そんな言葉を聞きながらげんなりと教室の入り口付近に目をむける。

……なにしてんの、あいつら。

相変わらず痴話喧嘩を繰り広げながら、握ったお互いの手は決して離そうとはしない。
無性にイラッとした。


「仲いいよなぁ、あいつら。ほんと美男美女でお似合いって感じで。うらやましいわ、
ほんと」

「…あぁ、そうだな」

「ヤスさぁ、何であいつらと一緒にいんの?」

「は?なに言ってんだ、幼馴染みだからだっつの」


あ、今陸絶対ムラッてしてんな。

二人の様子をボーッと見ていた俺は、クラスメイトの笑い声に意識を戻す。


「違うって、そんな意味じゃなくてさ」

「あ?」


見惚れるほどに爽やかな笑みを浮かべるクラスメイト。
あ、何か嫌な予感。


「だってヤスって正直イケてねぇからさ、あの二人の間にいるのたまに見るけど、かなり浮いてんぜ、ヤス」

「…………俺、お前に何かした?」