何なんだよほんと。
『ごめん、ヤス。あたしヤスのこと友達としか思えないの』
そう言って走っていった彼女の背中を見つめながら、俺はその場から動けずにいたー…
「何勝手に人の回想シーン捏造してんの?」
「だってヤス、自分の口からじゃ言いにくいでしょ?」
「葉月…お前…」
くすりと口角を上げて葉月が笑う。
学校のマドンナと言われるのも何となく分かる。
形の良い唇が動いて、鈴を転がしたような声がー…
「…なんて言うと思った?ふふ、やっぱりヤスのその顔最高ね」
「………」
「ヤスの絶望した顔、あたしすごく好みよ」
あり得ん。
誰だ、こいつがマドンナなんてほざいた野郎は。
マドンナはマドンナだけど、半端ねぇ悪女じゃねぇか!
「…ねぇ、あんた何しにきたの」
「だから言ったでしょ?あたしヤスのその顔がたまらなく好きなのよ。他の人じゃダメ、ヤスじゃないと」
まっ…!
惑わされんぞ!
何こいつ!
すっげぇ甘いこと言ってくる割りに内容めちゃくちゃだからな!
何だよほんと陸といい葉月といい!
「…もうほっといてくんない?」
「嫌よ、こんなヤスまたいつ観れるか分かんないし」
「よぅし分かった。いつでもこの顔してやるから!」
「よしキタ!」
「…………」
約束だからね~!
そう満面の笑みで俺に手を振りながら走っていく葉月の後ろ姿を見ながら、少しだけ涙が出た。

